第11回ラオス日本内視鏡TTT-内視鏡治療のためのハンズオンワークショップ報告
- 今村健太郎
- 16 時間前
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今回はラオスの内視鏡治療のためのワークショプに講師として参加していただいた福岡大学筑紫病院の今村健太郎先生にご報告いただきます。
2025年10月6日および7日の両日, 第11回ラオス日本内視鏡TTT-内視鏡治療のためのハンズオンワークショップが, ビエンチャン市セタチラート病院において開催されました。本会からは, 代表理事の鴨川由美子先生, 大阪国際がんセンターの上堂文也先生, 同センター光学医療技師の宇座英慈先生, ならびに福岡大学筑紫病院の今村健太郎が参加いたしました。なお, 本ワークショップの模様は, 九州大学TEMDECの協力により, ラオス国内の県立病院にも配信されました。
【1日目:10月6日】
午前中は, 上堂先生および今村より上部消化管内視鏡診断(胃・食道)に関する講義が行われ, その後に症例検討会を実施いたしました。症例提示はラオス側から3例, 日本側は今村より1例が提示されました。ラオスの先生方が提示された症例画像は, いずれも読影に十分耐え得る精度で撮影されており, 活発な討議が行われました。 単なる一方向的な講義に留まらず, 各症例をもとに双方の意見を交換しながら問題点を明確に抽出する, 有意義な検討会となりました。午後は, 宇座英慈先生による内視鏡メンテナンスに関する講義とハンズオン実習が行われました。続いて, 上堂先生と今村が指導を担当し, 参加者をアドバンスグループとビギナーグループの2班に分けてトレーニングを実施しました。内容は, 内視鏡シミュレーターを用いたスコープ操作訓練, 胃モデルを使用したシステマティック・スクリーニングのハンズオントレーニング, さらにクリッピングおよびコールドスネアポリペクトミー(CSP)のハンズオントレーニングなど, 多岐にわたりました。また, 本ワークショップは「日ラオス外交関係樹立70周年事業」として認定されており, 同日午後には在ラオス日本国大使・小泉大使にご視察いただきました。
【2日目:10月7日】
2日目の午前は, 上堂先生より内視鏡治療全般について, 今村より内視鏡的止血術に関する講義を行いました。 午後には, 豚胃を用いた内視鏡治療(ポリペクトミー, EMR, ESD)のハンズオントレーニングを実施いたしました。今村が担当したビギナーグループには若手医師が多く, 全員が内視鏡治療未経験者であったため, 基本操作および治療内視鏡の基礎手技の習得を中心に指導を行いました。ラオスにおける消化管疾患の現状については, 特に消化管出血が喫緊の課題であることを伺いました。現地では, 医療費負担の問題から多くの患者が受診を控え, 薬局で容易に入手できるNSAIDsを過量に服用することにより, 消化性潰瘍および消化管出血の発症が多いとのことでした。また, 高周波装置を備える病院は限られ, 止血鉗子も高価なため, クリッピングおよび局注による止血が一般的であるとの説明を受けました。そのため今回私のグループでは, クリッピング操作を中心に指導しました。初日に繰り返し講義した内視鏡の基本操作や治療内視鏡の基本戦略についても, 2日目には多くの受講者が理解し, ある程度は実践できるようになっていました。しかしながら,当然ではありますが短期間での習得は困難ですが, 今回得た知識と技術を各自の施設で継続的に練習することで, より確実に身につけていただけるものと期待しております。ワークショップ終了後, 2日目の夕刻にマホソト病院, 翌3日目にミタパブ病院を見学いたしました。いずれの施設も建物は立派でしたが, 内視鏡機器やメンテナンス体制を含む医療設備の面では非常に脆弱な部分が見受けられました。今回の活動を通じ, 医療システムは社会制度や経済状況に強く依存することを改めて痛感いたしました。 今後も微力ながら, ラオスの医療および内視鏡診療の発展に貢献できるよう努めてまいりたいと存じます。
写真上段左;講義を行う今村先生
写真上段中;講義を聞く参加者
写真上段右;ハンズオンで指導する今村先生
写真下段左;ハンズオンで指導する上堂先生
写真下段中;小泉大使を迎え集合写真
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