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日本人医師ブータンで活動するーその10ー

ブータンで日本人医師として活躍された阪口昭医師の奮闘記です。その第10回は日常生活の中からブータンの食べ物についてお話しいただきます。


10) 食べること

ブータンは敬虔なチベット仏教の国。至る所に寺院・仏塔・僧院があり、多くの人々がお参りに来ています。禁殺生の国なので、動物の屠殺はしないし、釣りも禁止です。しかし、何故か肉屋さんはあります。肉はインドからの輸入と聞きました。日本のようにパック詰めの肉は少なく、量り売りが主です。骨や皮のついた肉塊を前に、「この部分を何キロください」というと、トントンとナタのような包丁で切ってくれます。それを持って帰って、家で皮、脂などを外してから料理に使います。

日本で食べ慣れた肉の味ではないし、魚は無いので、我が家では卵が重要な蛋白源になりました。魚を食べたのは、二年間で数回でした。

日本食の食材は、コロナの影響もありますが、なかなか手に入りにくいです。奥さんが日本人のラーメン店が日本食に会える唯一の店でした。

ブータンの主食は米です。市場に行けば、数種類の米が売られていますが、中にJapan ライスと書かれているのがあり、ジャポニカ米が売られています。日本の先人の努力*のおかげにいつも感謝です。 

野菜と言えば、唐辛子です。日本料理で唐辛子は香辛料としての存在ですが、ブータンでは主野菜です。唐辛子とチーズの煮物、エマダチは代表料理で、初めて覚えたブータン料理の名前です。とにかく、辛みがないとブータンでは人気がありません。市場では白菜以外、青葉野菜やタマネギ、ジャガイモなども多くの野菜が売られています。しかしなんといってもメインは唐辛子です。大きさはピーマンから鷹の爪サイズまで、色も緑、黄色、赤と多彩です。全国のどこでも作っているし、インドからの輸入もありますが、ブータン東部地方で採れる唐辛子が一番美味しいとか。しかし残念な事に私には唐辛子の味の違いはわかりません。民家の屋根の上で、真っ赤な唐辛子が干されているのが、ブータンの風物詩です。

松茸も印象的です。ブータンの山で今もたくさんの松茸が採れますが、あまりブータン人には好まれてはいません。市場では、殆どシイタケと同じ値段で売られています。他の野菜に比べればやはり高価なのですが、きのこ屋さんでは、床下から机の上まで、無造作にたくさんの松茸が並んでいます。8月になると出回り、1キログラム約1200円ぐらいです。日本では1キロ13万円くらいするらしいので、約百分の一の値段です。1キロはとても夫婦二人では食べきれないので、500gを買って、ユーチューブで料理法を学習して、焼き松茸、天ぷら、松茸ご飯、お吸い物と、ここぞとばかり食べました。日本では考えられない夢の松茸生活は約2ヶ月可能です。最近日本への輸出も軌道に乗ったようで、財をなしたという人の噂もちらほら。

グリーンアスパラも、妻が言うには日本では考えられないほど安いとか。旬になると市場のどこでも見かけます。日本から種が輸入されて、栽培に気候風土が合ったのか、今では農家の収入源になっているようです。農業での日本とブータンの関係は深いなあと感じます。

果物ではマンゴーとバナナが、我が家のメインフルーツでした。真冬以外は、いつでも手に入ります。マンゴーは日本にいるときは滅多に食べなかったのですが、美味しい、安いとなると知らない間に毎日食べていました。 ブータン北部は中国と接し、ヒマラヤ山脈の中にありますが、インドと接する南部は、海抜も低く、緯度も沖縄県とほぼ同じで、亜熱帯の気候なので熱帯のフルーツも市場に並びます。パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、ライチ、パイナップル、オレンジなどなど。我が家は海抜2400メートルにあり、庭ではリンゴ、アプリコット、クルミが実りました。美味しそうな柿は、食べてみて実は渋柿であったのには驚きましたが、食べ物への執念で吊し柿にしておいしくいただきました。(次回に続く)

*(編集注)1964年から28年間日本人専門家西岡京治氏が、農業指導を行い日本コメ品種の導入・普及や換金作物であるリンゴ・アスパラガス等の栽培指導、ブータンの農業の近代化に大きく貢献され、国王からダショー(優れた人の意味)の称号を贈られました。

写真上段左:街の肉屋さん、天井にはベーコンとソーセージ

写真上段中:市場の唐辛子

写真上段右:500gの松茸、約600円

写真下段左:市場の果物屋さん、マンゴーとリンゴが並んでいます。

写真下段中:自作の吊し柿

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