top of page

ブータンでESDを!ー第1回ブータン消化器内視鏡ワークショップに参加してー

今回はブータン人医師が初めて発見した早期胃癌の内視鏡的粘膜下層剥離術を行った大阪国際癌センターの上堂文也先生にその様子をお知らせ頂きました。


2023年8月7日、8日と、ブータンのJigme Dorji Wangchuck National Referral Hospitalでの第1回ブータン消化器内視鏡ワークショップに参加してきました。本ワークショップは、国立国際医療研究センター 国際医療協力局の医療技術等国際展開推進事業「ブータン王国における内視鏡を用いた消化器疾患の早期診断と治療」(代表大分大学山岡𠮷生先生)の事業として開催されました。これまでブータンの内視鏡医の指導について、NPO-HIGAN (胃癌を撲滅する会)としての事業やAMED/JICAの地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)(代表山岡𠮷生先生)として胃癌の早期発見を主体に指導が行われてきましたが。今回は発見された早期胃癌に対してのさらなる精密検査と内視鏡治療の指導も行うべく、プログラムが企画されています。

まず、初日は山岡𠮷生先生の挨拶に始まり、福岡大学筑紫病院の八尾建史先生と大阪国際がんセンターの上堂から、それぞれ早期胃癌のNarrow band imaging(NBI)拡大観察と内視鏡切除についての講義を行いました。なお、八尾建史先生および山岡𠮷生先生はHIGANの理事でもあります。その後は内視鏡室に移動して、ブータンの先生たちが実際に見つけた早期胃癌と早期食道癌症例に対して、八尾建史先生のNBI拡大診断と上堂によるEndoscopic submucosal dissectionによる病変の内視鏡切除が行われました。2日目は午前中に胃のシステマティック・スクリーニングのハンズオン・トレーニング、午後は昨日と同様に早期胃癌の拡大内視鏡診断とESD、また前医で切除が困難であった大腸腫瘍の内視鏡切除のライブ・デモンストレーションが行われました。今回のプログラムでは主に日本人の内視鏡医が手技を見せる内容でしたが、今後はブータンの内視鏡医が発見した胃癌を、自分たちで精査〜適応判断し、内視鏡で切除するようになることを目標に活動を継続していきたいと考えています。ただ今回のワークショップにおいても、自分たちが発見した胃癌が内視鏡で根治的に治療できる、ということを実際の症例で体験してもらえたことは、ブータンの先生方にとって非常に画期的なことであり、今後の内視鏡診断と治療技術の向上のための大きな動機付けになったのではないかと考えます。

また、その後チラン県の病院見学に行って、内視鏡診療の実状を見ることができたのも大きな収穫でした。チラン県までは160 kmの距離ですが車で4–5時間をかけて行く必要があり、途中で地域の生活も垣間見ることができました。医療は国の社会・経済的背景と密接に関連していますが、この国でどのように日本式の内視鏡診療を組み込むことがこの国の人たちにとって最善なのかなど、いろいろと考えることも多かったです。さらに今回のハイライトはロテ首相の計らいにより、国王に謁見する機会を得られたことでした。山岡𠮷生先生から胃癌撲滅への取り組みの内容とそれがどのように国民の健康に寄与するかが説明されましたが、非常に熱心に聞き入ってコメントをされておられました。今回、自身にとっては初めてのブータン王国の訪問でしたが、非常に有意義かつ密度の濃い時間を過ごすことができました。これからも引き続きプロジェクトの成果を最大限に引き出すよう努力していきたいと思います。

最後に本ワークショップの開催にあたって多大な尽力・補助いただきました、SATREPS現地調整員の麻谷美樹様、SATREPS事業の一環として2か月の派遣滞在をしていた木澤温子先生、アジア遠隔医療開発センターの上田慎太郎先生に深謝いたします。


写真上段左:ESDの様子、中央:切除範囲の確認、右:切除標本

写真下段左:ワークショップ集合写真、中央,右:ワークショップの発表の様子













アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page