押味和夫先生インタビュー(名医をめざしてーその6)

押味和夫先生の E mailインタビュー、今回は先生の2度目の渡米について伺います。悔しい思いで後にした米国に、再渡米することになったお話を伺います。

Q: 先生は順天堂大学を定年を迎える前に退職されていますが、その後はどう活動されたのでしょうか?

私は体調を崩したため、2008年に63歳で順天堂を退職しました。ボストン郊外にあるエーザイの研究所に雇っていただき、抗がん剤の開発に従事しながら、Dana-Farber Cancer Instituteの外来に通いました。幸い進行は遅く日本で使える薬も増えたため、3年半で帰国しました。

今回の渡米では何もかも違いました。周囲の人々の反応が違うのです。すごく親切で思いやりがあり、暖かいのです。なぜだろうか、いろいろ思い当たることがあります。私自身が年を取っている、若い人と競争する立場にはない、それなりのポジションにいる、日本の研究所で働いている、などでしょう。必死になって英語で授業を続けたことも評価されたのでしょう。

Q: ということは2回目の渡米は印象が全く異なったということですね?

はい、そうです。それにしてもあの極端なアメリカ嫌いは一体なぜだったのでしょうか。いい仕事をして何とか彼らを見返してやりたい、あの気持ちはすっかりどこかへ行ってしまいました。競争心は消え、英語の上達なんてどうでもよくなりました。でも、日本人として恥ずかしくない行動をとろう、日本人のプライドを忘れないでいよう、アメリカなんかに負けるものか。ときどき思い出しては心を引き締めました。

この変わりようは、自分でも信じられないほどです。仕事の合間にアメリカ人の釣りキチと、大西洋岸でstriped bassを釣る余裕も出来ました。湖をカヌーで漕いで釣りました。アメリカ滞在最後の4か月は、家内と共に、カヌーを車の上に載せてボストンを出発し、ロッキー山脈を経てカナダ・アラスカを放浪しました。湖畔の1日15ドルのキャンプ場にテントを張って泊まる生活で、カヌーを出しては魚を釣りました。体が臭くなると町へ出てシャワーを浴び、食料を調達して山奥の湖へ戻りました。スペアタイア2本と予備のガソリンをたっぷり積んで、アラスカのDalton Highwayの砂利道を北極海まで往復しました。アメリカは楽しい素敵な国なんだ、と実感しました。

Q: ではアメリカへの留学は若者にお勧めできるのでしょうか?

アメリカの有名大学では中国・韓国・インドなどのアジア系学生が増え、日本人学生は減っているとのことです。日本人は内向的になり、2004年をピークに海外への留学生は減っています。確かに慣れない環境で苦労するよりも、日本国内に住む方がはるかに楽でしょう。しかし、外国生活で得るものは絶対に多いはずです。

最初に渡米してインターンをしていたとき、レジデントのフィリピン人女性医師が突然私に、「私の両親は日本軍に殺された」、と言いました。わたしはこのとき何と答えていいか分からず、ただフリーズしたままでした。どう答えるべきか、確かな答えは今でも見つかりません。アメリカは、異なる歴史、異なる背景を持つ人々が暮らす国です。しかし、その多様な価値観に触れて欲しいのです。日本との違いを実感して欲しいのです。アメリカの若者の冒険心に負けないで、若者は思い切って海外に出て欲しいのです。若者に限らず、多くの人が海外に出て欲しいのです。たとえ私のように、若いときにアメリカ嫌いになることがあるにせよ。

アメリカで釣れるのは魚だけではありません。私は、先輩の日本人や日系アメリカ人・日系カナダ人が米国やカナダで如何に苦労したか、如何に活躍したかを肌で感じました。先人がたどった歴史を見ますと、勇気が湧いてきます、自信が湧いてきます。優秀で勤勉で責任感が強い日本人は、武士道精神を底力に、もっともっと活躍して欲しいのです。貢献する手段が違っても、世界の人々の幸福のため、平和のために、世界のリーダーとして活躍して欲しいのです。必ず活躍できるはずです。

Q: 2度目のアメリカ滞在から帰国されてからはどのように過ごされているのでしょうか?

2011年秋に帰国したときには、人が多くてにぎやかな東京には住めなくなっていました。広くて静かで自然が豊かな終の住処を求めて、何の縁もゆかりもない北海道の東部へ移住しました。釧路空港から北へ車で40分、釧路湿原の西側にある鶴居村です。文字通り鶴、タンチョウが住む村です。牧場が広がる酪農の村です。釣りキチを夢中にさせるイワナやヤマメが釣れる村です。

道東は医療過疎の地ですので、少しでも地元の人のお役に立てればと思い、非常勤で診療を続けています。週の2日は釧路労災病院で血液内科の外来を、1日は釧路中央病院で内科外来を、もう1日はつるい養生邑病院で内科患者を診ています。血液の患者を診ているときや血液の論文を読んでいるときほど楽しいことはありません (ひょっとして釣りよりも楽しい?)。それに論文を読むのはボケ防止にもなるでしょう。

週末には、もちろんすぐ近くの川でイワナやヤマメを釣ります。釧路川をカヌーで下りながら釣ることもあります。屈斜路湖に行けばヒメマスが釣れます。ヒメマスは紅鮭の陸封型ですので、アラスカ・キーナイ川の紅鮭を思い出しながらの釣りです。冬は、湖の氷に穴を開けてワカサギを釣ります。知床沖ではたくさんの鮭が釣れます。昨年9月には多くの友人が知床を訪れ、船の上から豪快な鮭釣りに興じました。

続きます。

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