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押味和夫先生インタビュー(名医をめざしてーその3)

押味先生の名医をめざして、今回は医師の卒後研修について伺います。

Q; では、卒後研修についてのお考えをお聞かせください。

鉄は熱いうちに打て、卒後研修もそうです。若いときに厳しい訓練を受けて、体で覚えるのです。内科医を目指す者にとって必要なのは、救急医療と内科全般です。日本では離島でもない限り周囲数十マイルに医者がいないということはありませんので、何もアメリカの真似をして臨床全体を学ぶ必要はないでしょう。自分の専門でなければ、近くの先生に送ればいいのです。ただし、急変したときは自分で処置しないと間に合いません。急変時の鑑別診断と治療法は卒後研修で最も重要です。慢性疾患は勉強してじっくり治療すればいいのですから。 過労死するかもしれないほどの体力の勝負も必要です。

Q; では、過労死を避ける方法は?

米国のインターン・レジデントは、当直の日は眠れません。翌日も夕方まで働いて、帰宅後は死んだようになって寝ます。しかしその翌日は夕方に帰って、夏でしたらサマータイムなので夜の9時~10時まで外で遊べます。一見、不規則そうに見えても、規則正しく暮らしています。

Q; 何故そうできるのでしょうか?

主治医が患者と心中するまで付き合うことをしないからです。夜は完全に当直医に任せます。患者が亡くなっても主治医は病院に行きません。患者の家族もこのやり方で納得しています。これが、医師を長持ちさせる方法です。以前、私どもの科でもこの方法を検討しましたが、到底不可能なのであきらめました。こうするには、国民のコンセンサスが前提です。でも、コンセンサスを作るのは、そう難しいことではないと思います。

救急室当番も救急専門医だけに任せてはだめです。これこそ最も重要な教育ですから、ここを中心に研修させるのです。こうすれば、忙しすぎて救急室から専門医が逃げ出すこともなくなるでしょう。

ここまで話してきたことは、私が米国で研修した40年以上前のことが中心になっています。現在の米国の医学教育は大きく変わっているかもしれませんので、この点を詳しく調べた上で、もう一度見直す必要があると思います。

Q; 研修先はさまざまな場所があると思いますが、先生がいらした大学での若手医師の研修をどのように考えていらっしゃいますか?

大学病院の若手医師は、以前は8・8・8の時間配分で一日を区切って行動することが可能でした。8時間は睡眠や食事など自分の命を維持するための時間、次の8時間は患者を診る時間、残りの8時間は研究です。ところが、患者・家族への病状説明がていねいに行われるようになるにつれて(これが本来あるべき姿ですが)、診療の時間がどんどん増えてしまいました。そのため研究用の8時間が大幅に少なくなったのです。これも医師不足の一種です。こうなると大学で医療崩壊を防ぎ研究レベルを維持するには、ベッド数を減らすとかで医療の規模を縮小しないなら、医師の数を増やすしかありません。血液内科の医師も倍にするしかないでしょう。看護師の役割も見直さなければなりませんし、看護師の数も増やさなければなりません。しばらくは、研究レベルの低下は避けられないでしょう。大学の使命は、教育と研究です。その研究のレベルが下がるのは大きな問題です。

続きます。

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