日本人医師ブータンで活動するーその8ー

ブータンで内視鏡医として活躍された阪口昭医師の奮闘記です。第8回はERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)検査と治療についてです。検査は鍛錬を必要としますが、なんとブータンの首相と一緒に施行されたというエピソード付きです。是非ご覧ください。


8)ERCP(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography)

ERCPとは、内視鏡を使って、胆管や膵管の検査・治療を行う手技です。他の内視鏡検査に比べると、合併症を起こす率が高く、検査後膵炎を合併すると命に関わる事もあるので、大変ストレスがかかります。またレントゲン撮影や処置具の入れ替えが必要なので、チームワークなしにはできません。

私がブータンに着いた当初、ERCPは現首相(Dr. Lotay Tshering)が行っていました。彼は前回の総選挙で首相に選ばれたのですが、週末はそれまでと同じように外科医として当院で仕事をしていました。総理大臣と一緒にERCPをするなんて全くの想定外で大変驚きましたが、彼は外科医の仕事が大好きで、大変気さくに、学会で日本に行った時日本の印象が非常によかったという話をしてくれました。

ブータンでのERCPは鎮静は行いますが、前処置はなしです。腸の動きを抑える薬も使いません。体位も、左横向きで、日本で慣れている腹ばい(腹臥位)ではありません。レントゲンは、手術室にある移動用レントゲン装置を内視鏡室に移動させて使用するので、手術室で必要になると、急に検査がストップとなります。内視鏡室には放射線遮蔽の構造はありませんでした。

 チームは医師と介助の看護師3名。レントゲン技師はおらず、医師は右手で内視鏡を保持し、左手でレントゲンを操作します。モニターの解像度は不良で、撮影範囲が狭いためどこの部位が映っているのかを見極めるのは慣れるまでは大変でした。処置具は使い捨て物品を消毒後再利用するので、変形等は致し方なしです。

 そういう状況だったので、医師が私一人でするERCPは大変緊張しました。合併症が起こって死亡とかなれば国際問題になるのではと思ったくらいです。幸い大きなトラブルもなく、2020年3月にタイとインドでERCPの研修を受けていた二人の先生が帰国しました。その後は、少なくとも医師は二人で行うことができるようになり、レントゲン装置も内視鏡室専用の装置が購入されました。毎週1日はERCPの日となり、予約は最大5名です。検査前には原則、造影CTもしくはMRCP(MRIで胆管膵管を調べる検査)も可能です。

 時には急性閉そく性化膿性胆管炎などの緊急症例もあり、全身状態が不良な患者さんは手術室で麻酔科医師の管理の下で施行することも必要でした。

 主に、36歳の外科医 Dr. Sonu Subbaと二人でその後約140件のERCPを行うこととなりました。約1年も経てば、手技成功率も上昇し、多数の大きな胆管結石の除去や胆管金属ステントの留置も可能となりました。今後のブータンでのERCPの発展は、彼の腕にかかっていると思われます。(続く)


写真上段左:ERCP時の内視鏡室 写真上段中央:内視鏡用物品の保管(再使用物品も並んでいます)写真上段右;新品の物品もたくさん購入されました。

写真下段左;炭酸ガス送気装置:残念な事にボンベとの接続部品が無くて今は睡眠中。写真下段中央;手術室でのERCP準備中。真中から出ているアームからレントゲンをとります。

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