日本人医師ブータンで活動するーその7ー

ブータンで内視鏡医として活躍された阪口昭医師の奮闘記です。第7回は大腸内視鏡検査についてです。今回は大腸の写真ではなく、ブータンの風景の写真を添えます。


7) 大腸内視鏡

 私がブータンで行った大腸内視鏡検査数は2年間で約350例。胃内視鏡が4000例であったのに比べると約1割未満であった。前任の日本の病院では大腸の件数は胃の約半分もしくはそれ以上であったのに対して、非常に少ない件数であった。その原因は、大腸がん対策が普及していないことや、大腸がん検診制度がないことが一番考えられた。

 大腸内視鏡は週一日で、予約枠は6名。前処置は2リットルのポリエチレングリコール溶液を検査前日の夜間に内服する。食事制限は3日前から低残渣食で前日は流動食のみという厳しいものであった。しかし、前処置*の状態は非常に悪く、透明の便汁の人は皆無で、観察前に混濁便汁との闘いに明け暮れた。水をかけても消えない大量の気泡に対しては、消泡剤もなかったため、なにかいい方法はないかと前任の病院のナースにメールで問い合わせた所、筋トレ用プロテインの泡がミルクパウダーで消えると聞いた。その後大量の気泡に対して、ミルクパウダー液を振りかけた時、一瞬にして泡が消え、目を疑った。

 なんとか前処置の方法を変えようと試みたが、前処置が悪いのは患者さんが食事制限や内服をきちんとできていないためという意見が強く、なかなか聞き入れられなかった。しかし2年目に入った頃からポリエチレングリコール溶液を4リットルに増量することが採用され、やや改善が見られた。緩下剤の種類を増やし、食事制限を緩和し患者負担を減らして、結果を客観的に評価すべきであったと反省している。結局はウオータージェット機種の導入で、便汁との闘いは楽になった。また消泡剤が使用可能となったため、ミルクパウダーもお役御免となった。

 大腸内視鏡は胃内視鏡と違って、全員に鎮痛鎮静を行う。薬剤は、ペチジンとミダゾラムの併用。一人にかける時間は30分以内を目標として、ポリープが見つかれば同時に切除を基本とする。当初は、内視鏡は古いし、前処置は悪いしで(私の腕は置いといて)、盲腸到達までの時間は15分を超えることは普通で、約1時間かかる人も少なくなかったと思う。なんとかしないといけないと思い、電子書籍とYouTubeで技法を復習した。

2年目も後半になって外科医の Dr. Sonam Dargay や Dr. Sonu Subba が毎週来られるようになったため、分担して検査を行うようになった。軽部先生の本(1)を無断で英語に訳して挿入術を共有したかったが挫折した。

20代の若者で進行大腸癌が3例も見つかり、また大腸結核の人も多く、今後大腸内視鏡が増々重要になるであろうと思われた。(次号に続く)

*大腸内視鏡では大腸内に便が残っていないことが観察の必須条件です。そのため下剤を飲んでもらい腸を綺麗な状態にしておくことを前処置と言います。

(参考文献1) カール先生の大腸内視鏡挿入術、軽部友明著 日本医事新報社 2014年発行


写真上段左;昨年3月15日家の庭のリンゴの花が満開となる。写真上段中;7月にはリンゴが赤くなりました。写真上段右;9月にはりんごの収穫です。

写真下段左;お寺に参るときは正装で。(ブータンの男性の民族衣装は"ゴ”といい着物にそっくりで腰のところをケラという帯でしめ、僧院に入るときは"カムニ"という大判のスカーフを巻きます。)写真下段中;自宅は街の真ん中でしたが、大きな庭とインド軍の駐屯地があって緑がいっぱいです。

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