日本人医師ブータンで活動するーその4ー

ブータンで内視鏡医として活躍された阪口昭医師の奮闘記です。第4回は活動の場とされたブータンの首都にある主幹病院、ジグメドルジワンチャック国立中央病院の様子と医療事情についてです。


4)Jigme Dorji Wangchuck National Referral Hospital(JDWNR)病院

JDWNR病院は、第三代国王 Jigme Dorji Wangchuck を記念して建てられたブータンの中央病院で、全国から患者さんの紹介を受けるブータン最後の砦となる病院であった。診療科13、ベッド数381床、医師91名、総スタッフ1530名。ティンプーは人口約15万人の首都ではあるが、JDWNR病院の他には約100床の陸軍病院しかなく、開業医も2軒のみなので、一次から三次医療に対応せざるをえない病院であった。

外国人医師は、バングラデシュ、ミャンマー、インド、アメリカ、そして日本から、総数約10名くらい。麻酔科医、病理医、救急医、内科医など。コロナ流行前には、数名のボランティア医師がスペイン、アメリカからみえていた。日本の海外青年協力隊の看護師さんもICU(集中治療室)と透析室におられたが、残念な事にコロナ発生後強制的に帰国となってしまった。

カルテ(診療記録)は手書き紙カルテ。達筆の先生が多く、カルテを読むのが一苦労。入院カルテは病院保管であるが、外来カルテは患者に手渡すため、もしも患者さんがカルテを失うと、過去の記録は消えてしまう。ただ、血液検査、病理検査と、CT、MRI の画像だけは、コンピューター端末から院内LANでアクセス可能であった。

月に一回、土曜日の午後に院内の医師全員が集まり、前の月の死亡症例についての検討会が行われ、今後の改善点について討論された。  

ブータン人の平均寿命は約72才で、過去10年での死因第一位はアルコール性肝疾患。悪性疾患のうち死亡第一位は胃癌であった。

総選挙で選ばれた現在(2022年3月時点)の首相の Dr. Lotey は、JDWNR病院の外科医でもあり、私がブータンに来た時、国内で唯一ERCP(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography, 内視鏡的逆行性胆管水管造影)ができる医師でもあった。コロナ感染で多忙となる前、首相とERCPをする機会もあった。現在でも彼は週末は病棟や手術室で仕事をしている。

病院の勤務時間は、平日は朝9時から午後3時、土曜日は午後1時まで。内科は毎朝8時半から、新入院患者の症例検討会があり、レジデントがプレゼンを行い、指導医が質問や意見を述べ、治療方針が決められた。

ブータンの医師は全員外国の大学(インド、バングラデシュ、スリランカが多い)を卒業して医師の資格をとり、その後帰国して1年間のインターン後、ブータン国内の病院で数年勤務したのち、JDWNR病院で4年間のレジデントをしてから専門医となる。

医師を養成する大学医学部の設立は大きな課題となっている。(次回に続く)

写真上段左;JDWNR病院正門、

写真上段中;病院玄関ホール;第三代国王と現第5代国王夫妻の写真が掲げられている。

写真上段右;病院中庭、外来棟と病棟の間

写真下段左;外来入り口、病院にも野良犬は住んでいます*。

写真下段中;出勤風景(阪口先生):右端に見える赤いアーチが病院正門です。

*注:仏教国であるブータンでは殺生をよしとせず、野犬も街に多く見かけます。狂犬病のワクチンを野犬にも施し耳に印を残しています。


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